子どもが学校に行けなくなると、親の毎日は一気に変わります。
朝になるたびに胸がざわざわして、
「今日は行けるかな」
「また休むって言われたらどうしよう」
「学校に連絡するの、もうつらい」
そんなふうに、子どもが起きてくる前から、親の心の方が先に限界に近づいていることがあります。
不登校というと、どうしても
「子どもに何があったのか」
「どうしたら学校に行けるのか」
「親はどう対応したらいいのか」
に意識が向きます。
もちろん、子どもの心身の状態を見ることは大切です。
ただ、実際の相談では、子どもだけでなく、親自身が本音を出せなくなっているケースがとても多いです。
「本当は学校に行ってほしい。でも、言ったら子どもを追い詰める気がする」
「私ばかり我慢している気がする」
「子どもは家にいられるのに、私は仕事も家事も学校対応もあって、自由がどんどんなくなっていく」
「毎日こんなに頑張っているのに、誰にも認めてもらえない」
「また私が抱えなきゃいけないの?」
こうした言葉は、親の心の中にはあるのに、人にはなかなか言えません。
子どもにも言ってはいけない気がする。
学校にも言えない。
家族に話しても、責められたり、正論で返されたりする。
だから親は、どんどん本音を飲み込んでいきます。
でも、本音を飲み込み続けた家庭の空気を、子どもは敏感に感じ取っています。
親が「何でも話していいよ」と言っていても、親自身が本音を出せずに苦しんでいると、子どももどこかで、
「本当のことは言ってはいけないのかもしれない」
「お母さんを困らせることは言えない」
「どうせ分かってもらえない」
と感じてしまうことがあります。
そうして、親も子どもも、本音を出せないまま苦しくなっていく。
不登校の悩みは、子どもだけを見ても、親だけを責めても、なかなかほどけません。
この記事では、不登校の子どもに対して親がまず何をしたらいいのかを、子どもの状態・親の本音・家庭の空気という視点から整理していきます。
子どもが不登校になると、親の心も揺さぶられる

子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、多くの親は冷静ではいられません。
最初は、何とか行かせようとしたり、優しく声をかけたり、理由を聞いたり、先生に相談したり、休ませて様子を見たりします。
けれど、それでも状況が変わらないと、親の中にはいろいろな感情が出てきます。
「このままで大丈夫なのかな」
「勉強は遅れないのかな」
「将来どうなるんだろう」
「私の育て方が悪かったのかな」
「周りからどう見られているんだろう」
最初に出てくるのは、こうした不安や心配かもしれません。
でも、少し時間が経つと、もっと人には言いにくい本音が出てくることもあります。
「本当は学校に行ってほしい」
「毎朝、欠席連絡をするのがつらい」
「子どもの機嫌をうかがう生活に疲れた」
「ゲームをしている姿を見ると、正直イライラする」
「私は仕事も家事も休めないのに、どうしてこの子だけずっと家にいられるのと思ってしまう」
「私ばかり我慢している気がする」
こういう感情が出てくると、親はさらに自分を責めます。
「こんなことを思うなんて、母親失格かもしれない」
「子どもが一番苦しいのに、私がつらいなんて言ってはいけない」
「親なんだから、私が支えなきゃ」
でも、ここで大切なのは、その本音を悪者にしないことです。
親の中に出てくる怒り、不安、焦り、嫉妬、孤独感、疲労感。
それらは、子どもを大切に思っていないから出てくるものではありません。
むしろ、それだけ真剣に子どものことを考えてきたからこそ、親自身の心も限界に近づいているのです。
文部科学省の調査では、令和6年度の小・中学校における不登校児童生徒数は約35.4万人で、過去最多とされています。
不登校は、いま特別な家庭だけに起きていることではありません。
多くの家庭で、子どもも親も、言葉にできない苦しさを抱えています。
最初に見るのは「理由」よりも今の状態
子どもが学校に行けなくなると、親は理由を知りたくなります。
「何があったの?」
「誰かに何か言われたの?」
「先生が嫌なの?」
「勉強がつらいの?」
そう聞きたくなるのは自然なことです。
理由が分かれば、解決できるような気がするからです。
けれど、不登校の初期に大切なのは、理由を無理に聞き出すことよりも、まず今の状態を見ることです。
子ども自身も、なぜ学校に行けないのかを言語化できていないことがあります。
「分からない」
「なんとなく無理」
「朝になると体が動かない」
そうとしか言えないこともあります。
睡眠は乱れていないか
夜眠れない。
朝起きられない。
昼夜逆転している。
眠っているのに疲れが取れていない。
こうした状態があると、子どもの心と体はかなり疲れている可能性があります。
親から見ると「だらだらしている」「生活リズムが崩れている」と見えるかもしれません。
でも、子どもの中では緊張や不安が続き、体の回復力が落ちていることもあります。
身体症状が出ていないか
朝になるとお腹が痛くなる。
頭が痛い。
吐き気がする。
体がだるい。
涙が出る。
こうした症状は、単なる甘えではなく、心身のSOSとして出ていることがあります。
特に朝だけ症状が強くなる場合、学校そのものだけでなく、登校準備、教室に入ること、人に会うこと、親の期待に応えることなど、複数の緊張が重なっているかもしれません。
家庭の中で安心できているか
家にいても、親の顔色をうかがっている。
親が話しかけると身構える。
部屋にこもる。
会話を避ける。
学校の話題が出ると、急に表情が硬くなる。
このような様子があるときは、家庭の中でも緊張が強くなっている可能性があります。
家庭が悪いという意味ではありません。
ただ、親も限界、子どもも限界の状態では、家の中に「見えない圧」が生まれます。
親が何も言っていなくても、ため息、表情、空気、沈黙、スマホを置く音、食器を置く音。
子どもはそういう小さな変化を感じ取っていることがあります。
親自身の焦りが強くなっていないか
子どもが不登校になると、親も追い詰められます。
だから、親の焦りが強くなるのは自然なことです。
ただ、親の焦りが強くなるほど、子どもはその空気を感じ取り、余計に本音を出しにくくなることがあります。
まず見るべきなのは、「なぜ行かないのか」だけではありません。
今、子どもはどのくらい疲れているのか。
今、親はどのくらい限界に近いのか。
今、家庭の空気は安心できる状態なのか。
そこから整理することが大切です。
親が本音を飲み込むほど、家庭の空気は重くなる

不登校の相談では、親がとても気を遣っていることが多いです。
子どもを傷つけないように。
刺激しないように。
追い詰めないように。
また荒れないように。
また泣かせないように。
また部屋にこもらないように。
もちろん、子どもの状態に合わせた関わりは大切です。
けれど、それが続きすぎると、親はだんだん自分の本音を出せなくなります。
「これを言ったらダメ」
「あれも言わない方がいい」
「学校の話はしない方がいい」
「将来の話も刺激になるかもしれない」
「私がつらいなんて言ったら、子どもを責めていることになる」
そうやって、親の中に“言ってはいけない言葉”が増えていきます。
でも、本音は消えません。
言わないようにしているだけで、心の奥には残っています。
「本当は学校に行ってほしい」
「少しは私の大変さも分かってほしい」
「毎日、機嫌をうかがうのがしんどい」
「私ばかり我慢している」
「子どもを支えている私を、誰も支えてくれない」
「もう、かわいそうって思えない日がある」
こうした本音を抱えたまま、表面では優しくしようとする。
平気なふりをする。
大丈夫なふりをする。
すると家庭の中には、言葉にはならない緊張感が生まれます。
子どもは、その空気を感じます。
「お母さん、本当は怒っている」
「私のせいで困っている」
「本当のことを言ったら、もっと空気が悪くなる」
そう感じると、子どもも本音を出しにくくなります。
親が本音を我慢するほど、子どもも本音を隠す。
親が空気を読み続けるほど、子どもも空気を読む。
そうして、親子の間に見えない壁ができてしまうことがあります。
こども家庭庁も、不登校の背景には様々な事情が複雑に関係している場合があり、学校や教育委員会だけではなく、医療・福祉などの関係機関とも連携し、地域全体で支援する必要があると示しています。
つまり、不登校は「子どもが学校に行くかどうか」だけでなく、家庭・学校・地域・支援体制を含めて見ていく必要があるテーマです。
「子ども第一」のつもりが、親の我慢を増やしていることもある
不登校の子どもを支えようとすると、多くの親は「子ども第一」で考えます。
子どもが安心できるように。
子どもが傷つかないように。
子どもが回復できるように。
それ自体は、とても大切なことです。
でも、子ども第一がいつの間にか、
「親は我慢するべき」
「親の気持ちは後回し」
「親が壊れても支え続けるべき」
になってしまうことがあります。
これは、長く続くと危険です。
親が我慢し続けると、心の余白がなくなります。
子どもの些細な言葉にイライラする。
ゲームをしている姿を見るだけで腹が立つ。
昼まで寝ている姿に絶望する。
学校のプリントを見るだけで涙が出る。
先生からの電話に出るのが怖くなる。
夫や家族に「甘やかしすぎじゃない?」と言われて、ひとりで全部背負っている気分になる。
そして、そんな自分をまた責めます。
「こんなことでイライラしてはいけない」
「もっと理解のある親にならなきゃ」
「子どもの方が苦しいんだから、私が我慢しなきゃ」
でも、本当に必要なのは、親がさらに我慢することではありません。
必要なのは、親の本音を安全に出せる場所を持つことです。
子どもにそのままぶつけるのではなく、まず親自身が自分の本音に気づくこと。
「私は何がつらいのか」
「何を分かってほしいのか」
「本当は何を怖がっているのか」
「どんな当たり前が崩れて苦しくなっているのか」
そこを整理することで、子どもへの関わり方も少しずつ変わっていきます。
親の本音を出すことは、子どもを責めることではありません。
むしろ、本音を自分の中で安全に扱えるようになるからこそ、子どもにぶつけずに済むようになります。
不登校は、親の価値観が揺さぶられるタイミング

子どもが不登校になると、親の中にあった当たり前が大きく揺さぶられます。
学校は行くもの。
朝は起きるもの。
勉強は遅れない方がいい。
友達と過ごす方がいい。
親は子どもを支えるもの。
母親は我慢するもの。
子どもの問題は親が何とかするもの。
これまで当たり前だと思っていた価値観が、子どもの不登校によって通用しなくなる。
だから苦しいのです。
子どもが学校に行かないことだけが苦しいのではありません。
自分が信じてきた子育て観、人生観、家族観、働き方、母親像まで揺さぶられるから、抜け出せなくなるのです。
ここで親は、大きな分かれ道に立ちます。
これまでの価値観に子どもを戻そうとする道
ひとつは、これまでの価値観に子どもを戻そうとする道です。
学校に行けるようにする。
生活リズムを戻す。
勉強の遅れを取り戻す。
周りと同じように戻す。
この視点も、決して間違いではありません。
社会生活や学習の機会を守ることは大切です。
ただ、それだけに偏ると、子どもも親も「戻れない自分」を責めやすくなります。
親自身の価値観や選択肢を広げていく道
もうひとつは、子どもの不登校をきっかけに、親自身の価値観や選択肢を広げていく道です。
今すぐ「不登校は贈り物です」とは思えないかもしれません。
苦しい最中にいるときは、そんなふうに受け止められなくて当然です。
でも、あとから振り返ったときに、
「あの出来事があったから、親子の関係が変わった」
「自分の生き方を見直せた」
「子どもだけではなく、自分自身も自由になれた」
そう感じる方もいます。
不登校は、ただの問題行動ではありません。
親子の関係、家庭の空気、親自身の我慢のパターンを見直す、大きなサインになることがあります。
親が最初に整理したい5つのこと

子どもを学校に行かせたい気持ちを否定しない
「本当は学校に行ってほしい」。
この気持ちは、悪いものではありません。
子どもの将来を心配しているからこそ出てくる自然な気持ちです。
大切なのは、その気持ちを子どもにぶつける前に、まず自分の中で認めることです。
「学校に行ってほしいと思っている私はダメな親」と責めるのではなく、
「私は子どもの未来が心配なんだ」
「このままどうなるのかが怖いんだ」
と、自分の本音の奥にある不安まで見てあげることが大切です。
自分が何に一番困っているのかを分ける
不登校の悩みは、いくつもの問題が混ざります。
子どもの体調。
学校とのやり取り。
勉強の遅れ。
昼夜逆転。
ゲームやスマホ。
親の仕事。
夫婦関係。
きょうだいへの影響。
お金の不安。
全部を一度に解決しようとすると、親も子どもも苦しくなります。
まずは、「今、一番しんどいことは何か」を分けて見ることが大切です。
子どもが学校に行かないことがつらいのか。
学校との連絡がつらいのか。
家で子どもと二人きりになる時間がつらいのか。
夫婦で意見が合わないことがつらいのか。
問題を分けるだけでも、少し呼吸がしやすくなります。
子どもの問題と親の課題を分ける
子どもが学校に行けないこと。
親が不安になること。
親が自由を失ったように感じること。
夫婦で対応がずれていること。
これらは、全部つながっています。
でも、全部を子どもの問題にしてしまうと、子どもは重くなります。
反対に、全部を親の責任にしてしまうと、親が壊れてしまいます。
大切なのは、誰が悪いかではなく、何が絡み合っているのかを見立てることです。
子どもの状態として見るもの。
親の心のケアとして見るもの。
家庭の空気として見るもの。
学校や環境との調整として見るもの。
それぞれ分けて考えることで、必要な支援も見えやすくなります。
親の本音を安全に出せる場所をつくる
親の本音は、子どもにそのままぶつけるためのものではありません。
でも、なかったことにしていいものでもありません。
「つらい」
「腹が立つ」
「疲れた」
「分かってほしい」
「逃げたい」
「もう無理かもしれない」
こうした言葉を安全に出せる場所が必要です。
本音を整理できると、子どもへの言葉が少し変わります。
表情が変わります。
家庭の空気が変わります。
無理に優しい親になろうとしなくても、親自身の中に少し余白が戻ることで、子どもとの距離感も変わっていくことがあります。
復学だけをゴールにしすぎない
学校に戻ることは、ひとつの選択肢です。
でも、不登校支援の目的は、ただ学校に戻すことだけではありません。
子どもが安心を取り戻すこと。
自分の気持ちを少しずつ出せるようになること。
人とつながる力を取り戻すこと。
必要な支援を求められるようになること。
自分の人生を少しずつ選べるようになること。
その先に、復学がある子もいます。
別室登校、フリースクール、オンライン学習、家庭での休養、別の環境が合う子もいます。
大切なのは、「学校に戻るかどうか」だけで子どもの回復を判断しないことです。
とことこRoomでできる不登校相談
とことこRoomでは、不登校を子どもだけの問題として見ません。
子どもの心身の状態、親の本音、家庭の空気、夫婦関係、きょうだいへの影響、学校との関係、生活リズム、親自身の過去の傷つきや価値観。
こうした背景を一緒に整理していきます。
「学校に行かせるにはどうしたらいいか」だけではなく、
「なぜ今、親子がこんなに苦しくなっているのか」
「親が何を我慢し続けているのか」
「子どもは何を感じ取っているのか」
「家庭の中に、安心して本音を出せる空気をどう作るか」
を一緒に見ていきます。
親が本音を整理できると、子どもへの関わり方は変わります。
無理に明るくしようとしなくてもいい。
完璧な声かけをしようとしなくてもいい。
子どもの機嫌を取り続けなくてもいい。
親が自分の本音を責めずに扱えるようになると、家庭の空気が少しずつ変わります。
その変化の中で、子どもが安心し、本音を出し、外の世界とつながり直していくことがあります。
札幌・石狩エリアでの訪問相談、託児付き相談、オンライン相談にも対応しています。
子どもを無理に変えようとする前に、まずは今の状態を一緒に整理してみてください。
まとめ|子どもを変える前に、家庭の空気を整える

不登校は、子どもだけの問題ではありません。
そして、親だけの責任でもありません。
子どもの心身の状態、学校での体験、家庭の空気、親の焦り、夫婦関係、生活の負担、親自身の価値観。
いくつものものが重なって、今の状態が起きていることがあります。
だからこそ、必要なのは誰かを責めることではありません。
見立てることです。
親が本音を飲み込み続けると、家庭の空気は重くなります。
子どもに本音を出してほしいと思うなら、まず親自身が、自分の本音を悪者にしないことが大切です。
「本当は学校に行ってほしい」
「私もつらい」
「私ばかり我慢している気がする」
「頑張っていることを認めてほしい」
そんな本音が出てきても大丈夫です。
その本音を子どもにぶつけるのではなく、安全な場所で整理していけばいいのです。
不登校は、とても苦しい出来事です。
でも、その苦しさの中には、親子の関係を見直し、親自身の選択肢を広げ、家庭の空気を変えていくサインが含まれていることがあります。
子どもを変える前に、家庭の空気を整える。
家庭の空気を整える前に、親の本音を責めずに扱う。
そこから、親子の回復が始まることがあります。
不登校の悩みを、ひとりで抱え込んでいませんか?

とことこRoomでは、子どもの不登校や登校しぶり、親子関係、親の不安や罪悪感、家庭の空気まで一緒に整理していきます。
「学校に行かせるにはどうしたらいいか」だけではなく、なぜ今こんなに苦しくなっているのか、何から整えたらいいのかを一緒に見える形にしていきます。
札幌・石狩での訪問相談、託児付き相談、オンライン相談にも対応しています。
まずは、今の状態を整理するところから始めてみてください。
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参考資料
文部科学省|令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果
こども家庭庁|こども家庭庁における不登校対策

