親子の愛着は育て直せる 〜子どもの不登校から見つめ直す関係作り〜

「子どもが不登校になったのは、私が仕事で忙しくて十分に関われなかったからかも…」

「小さいときに十分な愛情を注げなかった。もう手遅れなんじゃ…」

「親としての自分を責めてしまって、前に進めない」

こんな思いを抱えていませんか?

保育園に子どもを預けて働いていた日々。そして今、お子さんの不登校に直面し、自分を責めてしまうママさんの気持ち、とてもよくわかります。わたしも看護師として長時間勤務をこなしながら育児をしていた時期があり、子どもとの時間が取れないことに罪悪感を感じていました。

でも、大切なことをお伝えしたいのです。

親子の愛着関係は、いつからでも育て直すことができるんです。

本記事の内容

「育て直せる愛着」という希望

日本では「3歳までの親子関係が一生を決める」という”3歳児神話”が根強く、特に不登校のお子さんを持つ親御さんは「小さい頃に十分関われなかったから取り返しがつかない」と思い込みがちです。

しかし、現代の発達心理学研究では、大人になってからでも愛着スタイルの変容が可能であることが示されています。この概念が「Earned Secure Attachment(獲得された安定型愛着)」です。メイン(Main)とその研究チームによって提唱されたこの考え方は、幼少期に不安定な愛着を経験した人でも、後の人生で安定した愛着を獲得できることを示しています。

つまり、お子さんが不登校になった今だからこそ、新しい親子関係を築くチャンスでもあるのです。

愛着と不登校の関連性

子どもの不登校には多様な要因が絡み合っています。学校環境、友人関係、学習面の困難など、単一の原因に還元できるものではありません。

しかし、心理学研究では安全基地としての親子関係が、子どもの探索行動(学校という環境への適応も含む)に影響することが示されています。

忙しい毎日の中で、知らず知らずのうちに

  • 子どもの行動だけに注目し、その背景にある感情に目を向けられない
  • 結果を急ぎ、プロセスを十分に認めてあげられない
  • 自分自身の不安から、子どもをコントロールしようとしてしまう

こういった関わりが続くと、子どもは「自分の気持ちは二の次」と学習し、自己理解や感情調整に困難を抱えることがあります。これが学校という社会的環境での適応に影響することも少なくありません。

愛着の再構築とは

愛着の再構築は、特別な技術というより、質の高い関わりの積み重ねです。神経科学の視点からは、安全で予測可能な関係性の中で、脳の扁桃体(感情反応を司る部分)と前頭前皮質(感情制御を司る部分)の連携が強化されることが示されています。

特に意識したい関わり方は以下の通りです

感情の受容と共感

子どもの表現する感情をまずは判断せずに受け止める姿勢。「学校に行きたくない」という言葉に、すぐに解決策や説得をするのではなく、「そう感じているんだね」と共感することから始めます。

安全な境界線の設定

子どものペースを尊重しつつも、適切な枠組みを提供すること。不登校でも「全く何もしなくていい」ではなく、その子に合った学びや成長の機会を一緒に考えていきます。

自己開示と等身大の関わり

親も完璧ではなく、悩みや失敗があることを適切に共有すること。「ママも仕事で疲れた日は休みたくなるよ」など、等身大の姿を見せることで、子どもは「感情を持つこと」「完璧でないこと」の自然さを学びます。

自律性の尊重

子どもの自己決定を支援し、内発的動機づけを育むこと。「こうあるべき」という外圧ではなく、子ども自身の「やってみたい」を引き出す関わりが重要です。

実際に変化があった働くママの事例

ケース1:フルタイム勤務で子どもと向き合う時間が持てなかったAさん

Aさんは小学4年生の娘さんが不登校になり、「仕事を辞めるべきか」と悩んでいました。フルタイムで働きながらの家事育児に追われ、娘さんの「学校行きたくない」のサインを見逃していたことを後悔していました。

変化のきっかけ:まず「過去は変えられないけれど、これからの関係は作れる」と考え方を転換。毎日15分だけでも、娘さんと「ただ一緒にいる時間」を作りました。スマホも見ず、家事も止めて、ただ娘の話に耳を傾ける。それだけの小さな変化から、娘さんが少しずつ本音を話すようになりました。

半年後、娘さんは徐々に別室登校からスタートし、今では週3日は教室に入れるようになっています。何より、Aさん自身が「完璧な親でなくていい」と自分を許せるようになったことが、大きな変化でした。

ケース2:子どもの不登校をきっかけに自分自身の愛着課題に気づいたBさん

Bさんは中学1年の息子さんが不登校になり、何度も説得しようとしましたが、かえって親子関係が悪化。カウンセリングを受ける中で、実はBさん自身も子ども時代に親から十分な共感を得られず育ったことが分かりました。

変化のきっかけ:Bさんは自分自身の感情パターンを見つめ直すことから始めました。「息子の不登校=自分の失敗」と捉えていた認知の歪みに気づき、息子さんの気持ちを理解しようと努力。自分が子ども時代に欲しかった「ありのままを受け入れる」関わりを、息子さんにしていくようにしました。

現在は息子さんの状態に一喜一憂せず、息子さんの「今」を尊重できるようになり、親子の会話が増えています。不登校は続いていますが、オンライン学習を始めるなど、息子さん自身が自分のペースを見つけ始めています。

愛着を育て直す小さな一歩

今日からできる3つのこと

  1. 感情の「ラベリング」を実践する
    心理学研究では、感情に名前をつけることが感情調整に効果的であることが示されています。子どもの言動の裏にある感情に名前をつけてみましょう。
    「そんなに宿題イヤなんだね。イライラしちゃう気持ちもわかるよ」
  2. 「親の自己ケア」を大切にする
    一日10分でも、子どもとの時間と別に、自分自身を大切にする時間を作りましょう。親自身の情緒的安定が、子どもとの安定した関わりの基盤になります。
  3. 小さな成功体験を共に作る
    「学校に行く・行かない」という二択ではなく、「今日は5分だけ校門まで行ってみよう」など、スモールステップの挑戦を一緒に考えましょう。成功体験の積み重ねが、自己効力感を高めます。

完璧な親でなくていい

多くの働くママが、「仕事と育児の両立」に罪悪感を持ちがちです。特に子どもが不登校になると、「もっと早くから気づいていれば」と自分を責めてしまいます。

しかし、ウィニコットの「ほどよい母親(good enough mother)」という概念が示すように、子どもの発達には「完璧な親」ではなく、子どもの発達に合わせて適切に応答できる「十分に良い親」が重要なのです。

あなたはすでに十分頑張っています。

大切なのは「今」からどう関わるか。私たち大人も、子どもも、いつからでも成長し変化する可能性を持っています。むしろ、子どもの不登校という「危機」が、新しい親子関係を築くきっかけになることも少なくありません。

過去ではなく、未来を選ぶ

「仕事で忙しくて十分に関われなかった」
「子どもの気持ちに気づいてあげられなかった」

そんな思いで自分を責めるママほど、実は子どもを心から大切に思う気持ちが強いのです。その愛情こそが、これからの親子関係を育て直す「種」になります。

愛着の理論を提唱したボウルビィも、生涯発達の視点から愛着は常に更新され得るものとしています。あなたとお子さんの間に、新しい「安心」と「信頼」を築いていく時間は、まだたくさん残っています。それは決して遅くはありません。

まずは、「このままでもいい」と自分自身を認めることから。
そして、お子さんにも同じメッセージを伝えることから。

ゆっくりでいい、一歩ずつ。
あなたとお子さんの関係が、新しく育まれていきますように。

とことこRoomでは、不登校のお子さんを持つママさんが自分自身も大切にしながら、お子さんとの関係を育て直していくためのサポートを行っています。一人で抱え込まず、一緒に歩んでいきましょう。

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この記事を書いた人

一般社団法人FP看護師パートナー協会 代表理事
看護師・カウンセラー・上級ハラスメントマネージャー・2級FP技能士

シングルマザー支援を行っていく中で、モラハラやメンタル不調者があまりにも多いことに驚き、認知行動療法をベースとした独自のカウンセリングスタイルで問題そのものの原因を解消。ハラスメント相手との関係性構築により金銭トラブルが激減、心身の不調も改善されるなど、クライアントの日常生活における選択肢を拡大させてきた。

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